解説・評論

【世相診断】社外取締役はガバナンス強化に役立つか?

◆世相診断 社外取締役はガバナンス強化に役立つか?

我が国においてコーポレート・ガバナンス強化の論議がなされるたびに、社外取締役の導入が大きな論点となる。今回の会社法改正においても実現はしなかったが、社外取締役の強制導入が検討されたことは記憶に新しい。米国流の監督と業務執行を分離する経営モデルをもてはやす風潮があるが、米国では一体うまく行っているのだろうか?その一つの参考材料として、故スティーブ・ジョブズのアップル社の取締役会の様子を紹介しよう。

スティーブ・ジョブズはどういう人を社外取締役に選んだか?
・新体制にオラクル社のCEOラリー・エリソン、インテュイット社のCEOビル・キャンベル(ジョブズの散歩仲間で、お互いの家が5ブロックしか離れていなかった。)を取締役に迎え入れ、取締役会はほぼジョブズ寄りのメンバーに再構成された。

・エリソンは、ジョブズから取締役就任を要請され、「取締役になるのは構わないが、取締役会への出席が面倒だ(but he hated attending meetings)。」と言われ、ジョブズは半分出てくれればいいからと説得する。そのうち、エリソンは取締役会に1/3しか出席しなくなった。ジョブズはビジネスウィーク誌に載ったエリソンの写真を実物大(life size)に拡大し、人型に切った厚紙に貼って、椅子に置いていた。

・その他の取締役:アル・ゴア、エリック・シュミット(グーグル社)、アート・レヴィンソン(ジェネンテック社)、ミッキー・ドレクスラー(ギャップ社)、アンドレア・ユン(エイボン社)など。人選のポイントは、忠誠心(royal)で、ジョブズが招いたのは高い地位にある人ばかりだが、いずれもジョブズに畏れや恐れを抱き、ジョブズにはいい気分でいて欲しいと願っている(eager to keep him happy)ように見えるメンバーばかりだった。
(Walter Isaacson “Steve Jobs” Simon & Schuster より)

仕組みや制度がコーポレート・ガバナンスを規定するのではなく、結局は、人すなわち中身であることを忘れないようすべきという教訓を我々に教えてくれるようである。

(JRS News 第3号より)

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